Ai時代の日本を揺さぶる赤船(China+Innovation)= ”智能”ベーション

Ai時代の日本を揺さぶる赤船(China+Innovation)= ”智能”ベーション

世界を揺るがすチャイナ・イノベーション、"智能"ベーションは、現地起業家・VC・PE・投資家・インキュベータ―等密接なネットワークから得られる最先端の独自ソースを元に、AI、ビッグデータ、クラウド、IOT、自動運転、V2X、ニュー・リテール等、幕末日本を騒がせた黒船のごとく、AI時代の日本を騒がす赤船たちを、特に破壊的なものを中心にご紹介していきます。

【中国最新AI事情】「中国嫌い」なアナタのための中国AI入門

赤船襲来! あなたは攘夷派? それとも開国派?

f:id:chinnovation:20180519210521p:plain

あなたは、「中国は嫌いだ」、「中国は苦手だ」、「中国人は上から目線」、そんな思いを抱えつつも、中国のAIベンチャーについて調べてこいと言われ、しぶしぶこのページを開いているのかもしれません。

「グローバル戦略で中国のプライオリティなんて低いでしょ?」というあなたに、中国でいま、何が起こっているのかを知ってもらうべく、上海よりこの記事を書きます。 

 f:id:chinnovation:20180519210818p:plain

 

例えば、以下のことをご存知の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?

 

市場
中国には「石油ゼロ」の政策があり、自動車をEVに転換しなければ、世界最大の自動車市場である中国市場で売上がゼロになります。

日本ではEVへの対応が遅れているのとは対照的に、中国ではEV対応の体制を整えなければいけません。

昨日、トヨタが10%合弁を通じて中国EV市場に参入という報道がありましたが、これはまだ入口でいずれ100%の締め出しを食らいます、政策に押されて、やむなく対応しているわけです。

jp.reuters.com

 

政府
自動運転には政府の存在が欠かせません。

上海では5G(超高速の次世代移動通信、4Gの100倍〜1,000倍の通信速度とデータ転送速度)の地区が整備されつつあり、社会インフラとしてのV2X*対応エリアがもうすぐ実現しそうです。

* V2X=Viecle to Everything  自動車と自動車、道路、クラウドがつながる(コネクテッド)情報や技術の総称。 

www.nikkei.com

chinnovation.hatenablog.com


資本

中国のAI関連のスタートアップの資金調達額は、2017年に、米国を抜いて初めて世界一になりました。

www.nikkei.com

スタートアップ企業といっても、2年未満で人民元や米ドルで1,000億円超(日本円換算)を調達する企業がぞろぞろあります。

中国最大の配車サービス企業であるDiDi(滴滴出行)社は、未上場でありながらバリュエーションは楽天の時価総額の約5倍、約6兆円です。

成熟企業でみても、中国を代表するネット関連企業であるテンセントの時価総額はFacebookよりも大きく、日本円で50兆円以上(トヨタの約2倍、ソフトバンクの5倍)です。

テンセントは、中国企業かとお思いでしょうが、テスラの株主でもあります。もちろん、多くの日本の上場企業よりはるかに潤沢な資金を持っており、自動運転やリテールをはじめとする、全分野へのAI参入を進めています。

www.bloomberg.co.jp

chinnovation.hatenablog.com

 

企業
中国企業といっても、AIのスタートアップに関しては皆さんがイメージするよりずっと欧米に近い側面があり、一般的な中国企業とはかなり違います。

f:id:chinnovation:20180520184242p:plain 

大前研一さんが十年以上前から指摘しているように、中国人でありながらも米国の修士・博士・教授、特許保有者、米国で起業した起業家が2000年くらいから多くなっており、また、米国企業を出資・買収し株主となった中国のPE・VC・スタートアップも多いです。

ワールドカップのブラジル以外のチームにやたらブラジル人が多い?のと同じで、もう中国と米国とを分けることにあまり意味はないのかもしれません。

よく、中国は米国の技術をパクっている、などと言われますが、わが国も明治維新で米英独に留学し、戦後は米国のシェアを奪うような自動車を作り上げていました。孫正義さんも「タイムマシーン経営」でシリコンバレーのモデルを日本に持ち帰り、いまでもグーグルやアップルを日本から100社つくると盛り上げています。

ある意味、日本と中国は、ともに米国から学び超越しようとしている良きライバルなのかもしれません。

その彼ら(中国の人材と企業)が、"米国よりよい環境"で、中国本土でスタートアップを行っています。"米国よりよい環境"というのは、"米国も参入したいほどの大きな市場"と"日本がうらやむ強いリーダーシップある政府"です。 

chinnovation.hatenablog.com

 

このようにつぶさに見ていくと、中国でのスピード感、スケール感、技術力は、現時点では、日本のそれをはるかに凌駕しているのではないか、というのが、私の偽らざる感想です。

 

では、そんな中国とどう戦い、競っていくのか?

それは、問いからして、そもそも間違っているのかもしれません。

 競争するより、協力する道もあるのではないでしょうか。

 

「でも中国は独自のルールがあるから、やってもしょうがない。まともにやって、付き合える相手じゃないし……」とおっしゃる方もいるでしょう。

中国はフェアな市場ではないため、どんなに努力してもまともに商売できる土俵にない、だから切り捨ててしまえ、という気持ちは、とても理解できます。

それはそれでいいと思います、しかし、それはグローバル・プレーヤーへの道を閉ざすことになってしまうのではないかと私は危惧しています。

 

日本やアメリカ以上に商慣行上の"意地悪"が多い中国で勝利を収めたユニクロは、真にグローバルですし、すごいことだと思います。

しかし、日本企業の中国市場での本当の戦いはこれからだと思います。それが間もなく始まる、AIの波による再編の戦いです。これは、ユニクロであろうと、例外ではありません。

 

中国系リテール企業にはすでに決済にAIが実装されて激しい競争が繰り広げられているというのに、中国に進出した日系リテール企業(ユニクロ・ローソン・ニトリ・AEON・高島屋など)の店舗はいまだに全てレジを使っています。

理由は簡単、本国の日本ではまだこれからだから! したがって、日系リテール企業は、このような日本以上に進化した市場に、無防備のまま参戦できずにいます。

chinnovation.hatenablog.com

 

また、モビリティ市場を見てみましょう。中国の自動車販売台数は年2,800万台です。これは、日本と米国を足した台数の1.3倍という、ものすごい台数です。

日本車がもし中国市場で劣勢となれば、どうなるのでしょう? 極めて急速なスピードで進化する中国のEVカーに、トヨタ、ホンダ、日産、日系ブランドが対抗しなければなりません。(中国のEVカーは、テスラとは異次元のレベルです。もっとも、テンセントはテスラの株主でもあり、中国系ともいえますが。)

日本は法規制がまだ先なので、自動運転もLV2-3程度です。一方、中国では、法規制どころか、5Gで地下を掘りV2Xのインフラ整備を始めています。日本以上にAI化した自動車と、外地で戦わなければならないのです。

chinnovation.hatenablog.com
www.nikkei.com

 

また、その自動車部品や頭脳となるAIは、日本製だけでは解決しません。例えば、これからのモビリティは音声出入力でなければ制御できません。中国市場であれば、現地語音声AIも必要で、日本のサプライヤでは無理です。

日本の自動車メーカーは、どの中国AI企業=Chinnovationと提携すればよいのでしょうか? 2,800万台の市場に、現行のカーナビのままで挑むわけにはいきません。

 

そして、カーナビどころかスピードメーターでさえ全部HUD(ヘッドアップディスプレイ)になり、多くの部品やサプライヤがものすごいスピードで日々進化しながら、大編成となります。それに、どう対応するのでしょうか? 

chinnovation.hatenablog.com

 

そしてもうひとつ忘れていけないことは、中国企業は中国市場でなく、世界市場で争う相手になるということです。

日本企業がガラパゴスを決め込んで、日本市場から締め出す、本土決戦で侵入を防ぐ、なんてことはできるかもしれません。しかし、アフリカ、東南アジア、ブラジル、中央アジア、ヨーロッパ……の市場ではどうするのでしょう?

 

 youtu.be

コンセプトでも世界初のモーバイクは未上場企業でありながら6億ドル調達し、ロンドン、ローマ、日本ではLineと組み一気に世界進出しました。

 

中国国内では世界最大級のビッグデータが加速度的に成長し、アプリケーション段階のAIが日々学習・実装されています。

 

youtu.be

すでに中国進出した日本企業(製品)は、現地でAI武装する必要はないのでしょうか? 海外市場の日本企業(製品)は、グローバル進出する中国企業とAI丸腰のまま戦うのでしょうか?

グローバル戦略のなかで、日本のサービス・製品が中国AIに遅れをとれば、中国市場を失うどころか、世界市場で劣勢になるのは火を見るより明らかです。

 

中国が、AI・モビリティにおいて世界で最もハイレベルな技術開発が行われているだけでなく、“最初”の激戦地だという事実、そして、中国市場のみならず、日系企業はグローバル市場で彼らとAI戦争しなければならないという事実。

グローバル戦略において中国AIを置きざりにできない最大の理由はここにあります。

したがって、競争するならするで敵をよく知る必要があるし、協力するならするで相手とよく馴染む必要があります。 

 

最後に。私は、あなたに、できれば中国を敵などと考えずに、手を取り合ってほしい。民間だけでなく行政・政府も含め、もっといい世界を作る"仲間"として見てほしいと思います。

 

孫正義さんはアリババの創業期に同社に出資をし、イギリスのARM買収の際も380億ドルのうち200億ドルをこのアリババ株式による融資で調達していますし、中国の最新スタートアップにも出資し続けています。さらに、UBERに出資しつつも日本ではDiDiをJVパートナーに選んでいます。彼にはおそらく偏見やバイアスはないのだと思います。

 

中国AIの優秀なエンジニアは、日本と同じく、世界人類のアップグレードをする、という目線の起業家がほとんどです。仲良くなれないわけがありません。

 

これからも、本ブログでは中国の最新AI事情をお伝えしていきます!

 

 

 

 

 

 

 

ー"智能"(チノ)ベーションについてー

"智能"ベーションとは、チャイナ発のAI・ビッグデータ・IOT等領域における、個別の革新技術とそれを応用した先進ビジネス・社会モデルの総称、いわゆるベンチャー(民間企業)のスタートアップにとどまらず、政府民間共同によるPPP等、智能都市・スマートインフラ・先進政治社会モデルを含む。

"智能"ベーションと有機的につながるためには、多くの壁があります。プレゼン・資料・チャット・グループなどはすべて中国語で、毎日情報が飛び交うため、英語や翻訳では到底間に合いません。言葉がわかったとしても、PE/VC/AIの知識、中国人起業家・投資家のコミュニティに溶け込むだけの高い経験値が必要になります。

執筆者略歴

 f:id:chinnovation:20180509173358p:plain  f:id:chinnovation:20180602125315p:plain

齋藤 誠一郎(さいとう せいいちろう)

大島 真一(おおしま しんいち)

2000年 東京大学経済学部在学中に起業、多くの日系企業の中国進出コンサルティングを行う。2005年 メディアコンテンツ関連のスタートアップ(株式会社星影通・CINETON 取締役、 34%株主)、2009年 香港金融グループ(肖建华)傘下台湾日盛証券(日盛金:5820)取締役などを経て、2014年、赛有限合伙 Seyh Limitedを設立。

上海在住(中国歴18年)

言語:日本語・中国語・英語

外資系証券会社、アドバイザリーファームを経て、2013年 株式会社ベストムーブを設立。企業買収・提携、資本政策、企業防衛等のアドバイザリーを行う。現在、中国スタートアップの魅力を日本に発信しつつ、資本提携・出資案件のソーシングに取り組んでいる。
東京大学経済学部卒業。

東京在住

言語:日本語・英語

これから2045年頃まで"智能"ベーションとお付き合いしていく覚悟です。ブログをご覧の皆さま、ご関心を持ってくだった方、どうぞお気軽にご連絡ください。 
f:id:chinnovation:20180511120147p:plain   Email : info (atマーク) chinoh.ai
f:id:chinnovation:20180511120140p:plain   Wechat : seisaito 
 f:id:chinnovation:20180511120717p:plain YouTube- Chinnovation-智能ベーション 

 

  "智能"(チノ)ベーション(=China+Innovation)は、現地起業家・VC・PE・投資家・インキュベータ―等密接なネットワークから得られる最先端の独自ソースを元に、幕末日本を騒がせた黒船のごとく、AI時代の日本を騒がす赤船、チャイナ発のイノベーションの数々を、AI、ビッグデータ、クラウド、IOT、自動運転、V2X、ニュー・リテール等、とくに破壊的なものを中心にご紹介していきます。