Ai時代の日本を揺さぶる赤船(China+Innovation)= ”智能”ベーション

Ai時代の日本を揺さぶる赤船(China+Innovation)= ”智能”ベーション

世界を揺るがすチャイナ・イノベーション、"智能"ベーションは、現地起業家・VC・PE・投資家・インキュベータ―等密接なネットワークから得られる最先端の独自ソースを元に、AI、ビッグデータ、クラウド、IOT、自動運転、V2X、ニュー・リテール等、幕末日本を騒がせた黒船のごとく、AI時代の日本を騒がす赤船たちを、特に破壊的なものを中心にご紹介していきます。

【中国的AIとは何か?・その2】これからのAIと、それを受け止める中国のインフラ

(前回から続く)

前回の記事では、AIの3大要素(1. プログラム、2. データ、3. インフラやIoT端末)について見た上で、それらのどれが欠けてもAIにはならないということを見ました。 

chinnovation.hatenablog.com

 

これから、AIはどのようなデータを取り扱うことになるのか

AIはデータの種類や重さによって分類できます。具体的には、テキストデータ、音声データ、視覚データといったデータです。

 

最もデータ容量の小さいテキストデータ解析については、一世代前のデータマイニングという言葉と一部オーバーラップしていると言えます。テキストでいえば、入力や検索の際に出てくるレコメンド機能や、質問を答える案内ロボットなどもAIですが、そうした多くの解析元データはテキストレベルのものが多く、この記事を書いている段階では、日本ではこのAIがまだ主流のように思われます。

音声データ解析については、Siriやスマートスピーカー等が音声を解析し言葉を入力できるというものです。

視覚データ解析については、顔を認識する技術や、ポルノサイトをブロックしたりする技術があります。また動画の分野においては、モビリティの路面解析や、ニューリテールの動作認識があります。 

 

時代が進むに連れ、AIが処理するデータの量は文字通りケタ違いのものになっていきます。そして言うまでもなく、それらのデータを処理できるインフラやIoT端末が必要となります

そして、現在、最もそのインフラとIoT端末が揃っている国は中国ではないでしょうか。米国は5G回線の敷設費用が高く、5Gネットワークの敷設については中国に圧倒的な差を付けられています。またIoT端末の単価の低さと普及度をとっても、中国は極めて高水準にあるといえるでしょう。 

forbesjapan.com

wired.jp

 

AIは人間を目指さない。では、何を目指すのか

AIはArtificial Inteligenceの略で、これを日本語に訳すと「人工智能」です。つまり、人によって作り出された人為的な智能(Artificial Inteligence)という意味であり、よく映画に出てくるような人間っぽいロボット、人間の頭脳を模倣してつくる、人間的智能(Human Inteligence)とは異なります。この「人為的な智能」と「人間的智能」との違いは重要です。

 

これはシンプルですが重要なポイントです。そもそも、人間の得意なことと苦手なこと、機械の得意なことと苦手なことには、それぞれ違いがあるのです。

例えば「コップに水を注ぐ」といった簡単な作業は、人間には得意であっても、機械には極めて難易度が高いです。一方で、10万桁の計算などは普通の人間には絶対に無理ですが、ちょっとした計算機は簡単にこなしてしまいます。

 

そしてAIの本質とは、学習によって人間にも機械にもできなかったことができるようになり、人間の限界が突破される、というものです。

これらを考慮することでAIの目指すべきものが見えてきます。 

 

人間が苦手なもの、機械が苦手なものは、下図のようにひとまずは取りまとめることができるでしょう。

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人間が得意だが機械が苦手なもの(例えば、コップに水を注ぐということ)は、機械は学習によって次第に克服し、マスターしています。トヨタの、バスケットボールをゴールに入れるようなプログラムなどがいい例です。

jp.reuters.com

 

機械がそもそも得意であった検索や膨大な量のデータの処理も同様に機械が学習するため、さらに進化していき、レジ打ちなど人間が行ってきた分野も機械が学習して代替していきます。

また、面接といった人間的なコミュニケーションは人間がやるべきことでしたが、一部AI化されてきています。志望動機、熱意、誠意などといった点は、人間的であればあるほど、逆に客観的に判断できず、AIを導入しているのかもしれません。これはある意味機械の苦手分野を逆手に取った例なのかもしれません。

www.nikkei.com

 

しかし、AIにもっとも期待される分野とは、このような「人間ができていたことを機械が代替する」という(人間がAIに仕事を奪われる的な)分野というよりも、むしろ人間の模倣を最初から目標に置いていない領域、つまり、これまで人間では行うことができず、また機械ですら不可能であった分野なのです。少なくとも、中国ではそのように考えられています。

 

例えば、4億5,000万人以上の利用者を2,100万台以上の車両とマッチさせ、毎日約2,500万件、年間約11億件もの最適な走行ルートを割り出し、到着時刻をも正確に把握する、といった、DiDi社がもつモビリティ配車AIシステムは、これまで機械では到底できなかったフロンティアを着実に開拓しています。
www.softbank.jp

このようなシステムを、DiDi社は、優秀なアルゴリズムだけでは達成できませんでした。DiDi社の2,000万台もの車両に取り付けられたIoT端末、高精度地図をつけた携帯端末を備えた"4億人のユーザー"としての巨大市場からもたらされるデータ、それらデータを蓄積するための巨大なクラウドを賄うサーバ、GPSや決済機能、といった生態系ともいえる中国の諸条件は中国でしか揃いません。どれが欠けても、機械の限界を超えていくことは難しいでしょう。

 

前回見た、AIの3大要素を思い出してください。1, プログラムだけではなく、2. データ、3. インフラやIoT端末がAIには必要なのです。このDiDi社のケースはその3要素が揃って初めてAIが成り立つということを如実に示しています。そして、この3要素を満たせる土壌があるのは中国だけではないでしょうか。

 

この中国という特殊な条件が揃った国の中で、アルゴリズムは学習をし続け、精度を高め続けています。つまり、中国という国の持つ特性こそが、機械の限界、ソフトウェアの限界を超えるイノベーションを生み出しているのです。そしてこれはそのままIoTでつながり、AIが駆使される都市=スマートシティに繋がる技術です。

こういったAIのイメージは、人間の代替品のイメージを遥かに超えています。

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中国的AIの正体

ここまで見てくると、もう明らかでしょう。

「中国的AI」とは、巨大インターネット人口とそれに付随する潤沢なビックデータ、政府によるインフラ投資・バックアップ、iPhone時代から培った低コスト×大量生産なIOT端末の製造メーカー群、民間による膨大な投資、米国帰りのトップエリートたちによるプログラム、これらの複合体なのです。

こうした官・民・資本一体の国家総動員的施策によって初めて、人間と機械の限界値は突破されていくと私は考えています。人間と機械の限界を突破する、ソフトウェアで終わらないAI、人の模倣で終わらない、世界創造的、社会創造的なAI、それこそが中国がいま実現しつつある、「中国的AI」なのです。

 

今後も本ブログは、このような「中国的AI」の実例を皆様にお伝えしていきます!

 

 

ー"智能"(チノ)ベーションについてー

"智能"ベーションとは、チャイナ発のAI・ビッグデータ・IOT等領域における、個別の革新技術とそれを応用した先進ビジネス・社会モデルの総称、いわゆるベンチャー(民間企業)のスタートアップにとどまらず、政府民間共同によるPPP等、智能都市・スマートインフラ・先進政治社会モデルを含む。

"智能"ベーションと有機的につながるためには、多くの壁があります。プレゼン・資料・チャット・グループなどはすべて中国語で、毎日情報が飛び交うため、英語や翻訳では到底間に合いません。言葉がわかったとしても、PE/VC/AIの知識、中国人起業家・投資家のコミュニティに溶け込むだけの高い経験値が必要になります。

執筆者略歴

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齋藤 誠一郎(さいとう せいいちろう)

大島 真一(おおしま しんいち)

2000年 東京大学経済学部在学中に起業、多くの日系企業の中国進出コンサルティングを行う。2005年 メディアコンテンツ関連のスタートアップ(株式会社星影通・CINETON 取締役、 34%株主)、2009年 香港金融グループ(肖建华)傘下台湾日盛証券(日盛金:5820)取締役などを経て、2014年、赛有限合伙 Seyh Limitedを設立。

上海在住(中国歴18年)

言語:日本語・中国語・英語

外資系証券会社、アドバイザリーファームを経て、2013年 株式会社ベストムーブを設立。企業買収・提携、資本政策、企業防衛等のアドバイザリーを行う。現在、中国スタートアップの魅力を日本に発信しつつ、資本提携・出資案件のソーシングに取り組んでいる。
東京大学経済学部卒業。

東京在住

言語:日本語・英語

これから2045年頃まで"智能"ベーションとお付き合いしていく覚悟です。ブログをご覧の皆さま、ご関心を持ってくだった方、どうぞお気軽にご連絡ください。 
f:id:chinnovation:20180511120147p:plain   Email : info (atマーク) chinoh.ai
f:id:chinnovation:20180511120140p:plain   Wechat : seisaito 
 f:id:chinnovation:20180511120717p:plain YouTube- Chinnovation-智能ベーション 

 

  "智能"(チノ)ベーション(=China+Innovation)は、現地起業家・VC・PE・投資家・インキュベータ―等密接なネットワークから得られる最先端の独自ソースを元に、幕末日本を騒がせた黒船のごとく、AI時代の日本を騒がす赤船、チャイナ発のイノベーションの数々を、AI、ビッグデータ、クラウド、IOT、自動運転、V2X、ニュー・リテール等、とくに破壊的なものを中心にご紹介していきます。